-ガムテープと光と地震


粘着面同士がくっついているガムテを引っ張ると、
今までくっついていた粘着面が別れ行く刹那に、一瞬だけ青白く発光するのです。
はがれてゆく瞬間のその一瞬だけなので、Yの股の部分だけ一筋光るんです。
引っ張り続けると、次々に現れる分かれ股がとぎれなくずっと光るのですが、
移り行く分かれ股がにじにじと光り続ける様はとても美しいものです。

10年以上も前ですが、暗い部屋で作業をしていてこの現象を発見した私は
しばしガムテの別れの光彩に見とれていたけれど、
いつしか我に帰ってガムテープ全体をしげしげと見て、
ガムテの芯の内側に印刷されていた会社か商品のロゴらしきものをみつけ、
さらに驚愕!
そこには「ヒカリ」とかいてあった。
「HIKARI」だったかも。詳しくは覚えてない。
でも、ひかりってかいてあったんだよね。
やっぱりガムテープ作ってる人は、光ること知っているんだ!って思ったりした。
ところで、その「ヒカリ」ガムテープは、その後は店頭で出会えず、買うことはできませんでした。
他のガムテープも色々試したけど、あまり光らない、もしくは全く光らない。
今でも必ずガムテープを買う際には芯の中を覗き込んでいます。


そんなことを思い出したのもこのニュースをみたから。

真空中で粘着テープを剥がすとX線生成」Nature誌掲載

真空中で粘着テープをはがしたときに解放されるエネルギーが、X線領域にまで広がっているのを観測。
ですって!

これは「摩擦ルミネッセンス[摩擦などで生成されるエネルギーによって引き起こされる発光]」に関しての研究ということなのだけれど、この研究で追求して見えてくることのひとつとして、
たとえば地震断層など、スティックスリップ摩擦[引っかかりと急激な滑りを繰り返す運動で生じる摩擦]を生じる2つの表面の接触面における電子の振る舞いをより深く理解することにつながる可能性があるという。
とのこと。

ガムテープが光ることから地震の研究の可能性が開けるなんて、面白い。

私は直下型地震を2回体験したことがある。
1度目は震源から3キロほど離れた場所で、震度は5強だった。
2度目は震源から1キロほど離れた場所で、震度は3だった。
威力は違えど、どちらも震源から近いというのはすごいものだった。

普通の地震の表現は「グラグラ」だけど、直下だと「ドカン」のほうが近い。
揺れるというよりかは、下から突き上げられる感じ。
私は東京住まいだが、中越地震のときの体感も忘れられない。
ゆら〜りふわ〜りと海の波に乗っているように、長く大きく揺すられた。
同じくらいの震度でも、両者は全く性質の違う地面の動きだ。

2度目の時は、数週間前からやたらと地震のことが気になり、とりあえず水のペットボトルを数本買ってみたり、高い位置のテレビを下に下ろしたりしていた。
そういう勘のようなものも、摩擦で起きるエネルギーの一部を感じ取っていたのかもしれないと思うと、またあの暗闇でのガムテープの青白い光をみたくなった。
「ヒカリ」テープにはまた会えるだろうか。